「さっき説明したのに、またか」。後輩や部下に同じ注意を繰り返すたび、教え方が下手なのは自分のほうかもしれないと感じてしまう。悪気なく聞き返されるたびに、指導力のなさを突きつけられている気がして、しんどくなる。そんな人へ向けた話です。
結論から言うと、教えたことが伝わらないのは、多くの場合「指導力」の差ではありません。情報を渡す順番と、相手が受け取りやすい順番がズレているだけのことが多いです。全体像から教えたい人、目の前の手順から教えたい人、理由や根拠から入りたい人、まず手を動かして感触をつかみたい人——これは“型”の違いであって、優劣ではありません。自分の自然な教え方を一度疑ってみることから、伝わる指導は始まります。
こういうとき、多くの人は「自分の教え方が下手なんだ」か「後輩の理解力が低いんだ」のどちらかに原因を探しがちです。ですが実際には、教える側は無意識に「自分が理解したときと同じ順番」で話してしまう傾向があり、それが相手の受け取り方と噛み合っていないだけ、ということがよくあります。
たとえば、全体像から入りたいタイプの先輩が「このExcel、まずシート全体の流れを見てからいこうか」と話し始めたとします。目の前の操作からひとつずつ積み上げたいタイプの後輩は、「えっと……今どこを見ればいいですか」と聞き返します。先輩は「さっき言ったよね」と思いますが、後輩からすると全体の説明は情報量が多すぎて、今この瞬間に何をすればいいのかがつかめていないのです。
逆のケースもあります。目の前の手順を一つずつ積み上げて教えるタイプの先輩が「まずここをクリックして、次にここ」と逐一指示すると、全体の目的から理解したいタイプの後輩は「これ、そもそも何のためにやるんですか」と聞きます。先輩が「それは後で説明するから、まず手を動かして」と答えると、後輩はモヤモヤしたまま作業を終え、応用が利かずにまた同じような質問をすることになります。
どちらも、教える側の熱意が足りないわけでも、教わる側のやる気が足りないわけでもありません。情報を「全体→部分」で渡したい人と「部分→全体」で渡したい人、「理由」から入りたい人と「とにかくやってみる感触」から入りたい人がいる、というだけの構造です。
脳命算は、生まれ持った気質の傾向(算命学ベースの命式)と、いまの物事の決め方・情報の受け取り方の傾向(脳科学の考え方をベースにした脳タイプ診断)を突き合わせ、そのズレから「ちゃんとやっているのに伝わらない」構造を言葉にする自己分析の枠組みです。教え方についても、自分がどちらの順番を自然に使う傾向があるのかを先に知ることが、最初の手がかりになります。命式は占い由来の考え方であることを隠さずお伝えしますし、脳タイプ診断も「科学的に証明された」ものではなく、自己回答にもとづく傾向の分類です。どちらも、言い当てるためではなく、自分の癖を考える材料として使うものです。
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こうした工夫は、教え方を根本から変えるものではなく、自分の自然な順番と相手の順番の“ズレ”を埋める小さな翻訳作業です。精神論で「もっとわかりやすく話そう」と意気込むより、まずは順番を疑ってみることのほうが、効果を感じやすいはずです。
教えても伝わらないと感じるとき、責めるべきは指導力でも後輩の理解力でもなく、情報を渡す“順番”のズレであることが多いです。自分がどの順番を自然に使っているかを知ることが、伝わる指導への最初の一歩になります。
※ 本コラムは自己理解のための情報提供であり、運命・吉凶・優劣や、指導力・理解力の優劣を断定するものではありません。当てはまり方には個人差があります。